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日記×続大和撫子(44)

前回に引き続き、足利義満に仕えた女房で明国出身のテルについて紹介する。

交際相手の二条為右によって、橋から湖へ突き落とされたテルは、幸運にも旅人だか漁師だかの舟によって救助される。

テルが奇跡の生還を果たしたので、為右の殺人未遂は露顕する。

ところで、江戸時代では密通は女性が被害者であっても処罰の対象だった。

現代の諸外国でも、密通した女性は処刑対象だ。

だが、義満が罰したのは、為右だけだった。

しかも、通常密通した男が官位剥奪や流刑ですむところを、流刑判決後に家来を使って為右を暗殺させた。

謀反以外の政治的事情が絡まず、武家が公家を殺害したのは前代未聞だということで、当時の公家社会は震撼としたらしい。

そして、テルは結局最後まで義満からの処罰はなかった。

義満は、あくまでテルを殺人未遂の被害者と見なしていたようだ。

外国人で女性という、二重に立場が弱い女性が、ここまで真っ当に扱われているのも、同時代の世界史的には珍しい。

だが、当時の公家達は、殺人未遂犯である為右が暗殺されたことについて「歌の偉い人なんだから、大目に見ればいいのに…」と言ったそうだから、女性に優しいのは、義満くらいだった可能性も捨てきれない。